空想と執筆の間

趣味の物書きについてのブログ

【読書】親指の恋人/石田衣良【お題】

今週のお題「最近おもしろかった本」

 

勉強という名の読書タイム。

自分で書くための参考にしたいから、作家の性別、ジャンル、主人公の性別、視点を重視して選ぶ。

もちろんそれ以外でも惹かれれば読む。

今回は”それ以外”のほう。

 

 

あらすじ

恵まれた環境に育ちながら、夢も希望も目標もない日々を送っていた20歳の澄雄。しかしある日携帯の出会い系サイトでジュリアとめぐりあい、彼の人生は一変してしまう。言葉をしらない獣のようにつながりあい、愛しあう二人だったが、六本木ヒルズに住む学生とパン工場で働く契約社員では、あまりにも住む世界が違いすぎた。
(「BOOK」データベースより)

 

  • 作者の性別:男性
  • ジャンル:恋愛
  • 人称:主人公視点の三人称
  • 主人公の性別:男性

 

またあらすじを読まずに購入。

タイトルと、イラストがかわいい表紙と、始まりの数行だけ読んで。

最初のページで結末が提示されているのだが、何も知らない私はサスペンスものだと思った。

アフォかと。

読みたいのは恋愛小説なのにサスペンスだと思いながらなぜ買ったかというと、表紙がかわいかったからだ。

あと本をあまり読まない私でも知ってる石田衣良先生だったからだ。

結果、サスペンス要素は全くなく恋愛小説だったのだが。

 

現代版「ロミオとジュリエット」。

六本木ヒルズに住む金持ち大学生の男と、少ない給料のパン屋で働き公営住宅に住む女。

出会い系サイトで知り合って付き合い始めた2人が、身分の違いと格差社会に苦しめられていくお話。

 

石田衣良先生の文章は美しい。

詩みたい。

なのにわかりやすく、すらすら読める。

 ガラス越しに都心のキャンパスの緑が騒いでいた。

 秋には散ってしまうのに、なぜ木々はこれほどの勢いで枝を伸ばし、葉を茂らせるのだろうか。無意味な繰り返しだ。
(本文P12より)

 奈央は歩道を離れて、墓石のあいだに夕闇のたまり始めた霊園にはいっていく。澄雄もあとを追った。(中略)葉桜の並木の陰は深く、一気にあたりは暗くなった。
(本文P55より)

木々は騒ぐもの。

夕闇はたまるもの。

陰は深いもの。

メモした。

 

いきなり結末が書かれているから、読み進めるのがつらかった。

このままラブラブのまま、幸せになってくれればいいのにと。

 

結末はハッピーエンドかそうでないか、読む人によってとらえ方が変わると思う。

私は悲しかったし泣いた。

読み終わって数日は引きずった。

再読するのはつらい。

 

裏表紙のあらすじを読んで現代版「ロミオとジュリエット」と知っていたら、買ってなかったと思う。

悲しいじゃん。

悲劇じゃん。

ハッピーエンドがいいよ。

 

でも買って大正解だったの。

私が書いてる小説と同じ舞台が登場したから。

びっくりした。

感激した。

同時に石田衣良先生の美しすぎる描写と、自分のただの説明文を比べてどん底まで落ち込んだ。

ちょっと10年前に小説を書こうと思い立ったところから出直してくる。